政府による10億円企業推進政策
政府は中小企業と日本全体を元気にする政策として2025年から、売上高100億円突破を目指す企業・経営者を後押しする「100億宣言」政策を推進しています。
そして2026年春、このすそ野を広げて、売上高10億円突破を目指す企業・経営者を後押しする「10億円宣言」政策を創設する方向性で検討していることを示しました。2026年「骨太の方針」でも、それが明示されています。

「経済財政運営と改革の基本方針2026」P.11
この資料から、中小企業への政府の期待が見えてきます。中小企業政策が始まった当初は「二重構造」といって「大企業に比べて生産性が劣り、格差が生じている中小企業が下請けとして大企業を支えている。このため中小企業が疲弊してしまわないように政策的に支援しなければならない」という姿勢でしたが、今では「強い経済の実現には強い中堅・中小企業が主役となって地域経済を牽引する必要がある」と、主役の座に引き上げられているのです。
その中小企業はバブル崩壊以降の失われた10年、20年、30年で疲弊した上に、今度は急速なインフレによる負担にもさらされています。働く人々の生活を守るために賃金を増やすよう求められているのです。企業数で99.7%を占め、雇用者数の約 7割が働いている中小企業(約70%)がこれを達成できないと、日本全体が失速してしまう。そういう想いに政府は駆られているのではないかと考えられます。
ではどうすれば良いのか?生産性の向上がカギとなります。現在、人口減少に伴う深刻な人手不足(労働供給制約)が顕在化していることもあり、「人が足りないから会社が回らない、増やせば回っていく」という発想ではなく「人を雇えなくても会社を回していく、もっと儲かるようになる」を目指して欲しい、そのような考えだと推察されます。
この想いを現実化するために政府は2025年から「100億宣言」政策を推進しています。売上高10億〜100億円未満の中小・中堅企業が、「自社は売上高100億円企業になる!」という野心的な目標と、実現に向けた取り組みを自ら宣言、このような企業を政府が大規模な投資やネットワーク構築などで支援するするという取組みです。中小・中堅企業による宣言(コミットメント)をポータルサイトで公表すると共に、宣言企業だけが申請できる大型補助金(中小企業成長加速化補助金)などを用意、加えて宣言企業・経営者だけが参加できるネットワークを形成して相互に刺激し合い、知恵を出し合って実現を目指すとしているのです。
100億企業成長ポータル
10億円企業についての政策も、宣言を行うなどが予定されているようで、100億宣言政策と似通った構造の支援となると考えられます。
100億円を目指す企業と、10億円を目指す企業との違い
「10億宣言政策は、100億宣言の考え方を、より幅広い成長企業に展開する政策」と捉えることができるでしょう。補助金の金額などでの違いはあるものの、同様スキームの政策がなされると考えられます。
一方でそれを利用する企業には、実は大きな違いがあると考えられます。対象企業が現在10億円以上100億円未満の企業から、現在1億円以上10億円未満の企業にスケールダウンすることになりますが、実はこの差は、成長に向けた課題が異なっていることを意味していると考えられます。以下のようにまとめてみました。
| 項目 | 1億→10億円 | 10億→100億円 |
|---|---|---|
| 成長の基本形 | 集中・組織化 | 分化・自律化・統合 |
| 最大の課題 | 社長依存から脱却し、組織化する | 組織を自律化・多層化し、経営体にする |
| 戦略 | 勝てる市場・顧客を選び、集中して拡大する | 既存事業を伸ばしながら、新市場・新事業へ展開し成長を複線化する |
| 社長 | 先頭に立って会社を引っ張る | 経営チームをつくり、全体を統合する |
| 組織 | 定義された役割を果たす機能体 | 自律的に動ける機能体(の集合) |
| マネジメント | 戦略実行・予実管理を定着させる | 各部門を自律させ、全社戦略のもとで統合する |
| 経営資源 | 人・モノ・カネを不足なく揃える | 経営資源を事業間で配分し、投資判断する |
10億宣言企業と、100億宣言企業との違い
以上のように考えると、ある仮説が立てられるのではないかと思います。
100億円を目指す企業も、10億円を目指す企業も、自社を知り、事業環境を知り、成長戦略とアクションプランを策定し、それを実行する必要があることに変わりはありません。
しかし、両者では、成長に向けた経営課題の性質が異なります。
10億円以上の企業では、既に一定の組織・人材・管理体制が整っている場合が多く、これまで蓄積されてきた経営学や経営実務の知見を、自社の成長課題に適用・組み合わせて活用することが比較的可能だと考えられます。
一方で、1億円以上10億円未満の企業では、そもそも「何を変えれば成長できるのか」が明確になっていない場合も少なくありません。社長への依存、組織、人材、営業、顧客、商品、財務など、複数の問題が絡み合っていることも多いのが実態で、表面的な問題を解決していくだけでは成長につながらない可能性があります。こうした企業に対しては、既存の経営手法をそのまま適用するだけでは十分ではない可能性があります。
以上のような仮説です。
では、10億円企業の成長を実現するためには、どのような経営の考え方が必要なのでしょうか。
企業ごとに異なる成長阻害要因を見極め、その企業に適した経営の仕組みを構築していくことが重要です。10億円企業がどのように成長し、どこでつまずき、何を変えることで次の段階へ進めるのかを、改めて体系的に捉える必要があるとも感じています。
10億企業創成支援研究会
こうした問題意識から、私たちは「10億企業創成支援研究会」を立ち上げました。
本研究会では、長年にわたって中小企業支援に携わってきた専門家、学識経験者、そして中小企業経営者などが集まり、「10億円企業が持続的に成長するためには何が必要なのか」を、理論と実践の両面から研究していきます。
本サイトでは今後、10億宣言政策に関する情報や、10億円企業の成長に役立つ情報を発信するとともに、当研究会の活動についても随時ご紹介していく予定です。
10億円企業を、どうすれば本当に増やしていけるのか。
その答えを一緒に探していきたいと考えています。
ぜひ、今後の活動にご期待ください。
